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映画『ベクシル-2077日本鎖国-』

 レンタルで、映画『ベクシル-2077日本鎖国-』を見る。
 監督は、『ピンポン』の曽利文彦。

 映画『APPLESEED』でも感心させられた、そのままのCGではなく若干アニメ調に処理した…トゥーンシェーディング、でいいのかな?…画面が非常に美しく、「よくここまで」と感心するぐらい作り込まれていて、画面から目を逸らさせないだけのパワーがある。
 日本映画の枠を越え、技術的にはハリウッドとも勝負できるレベル。
 美形キャラの造形は良く出来ているんだけど、「味のあるオジサン」といったキャラになると、途端に不得手な部分が見えてしまい、残念。
「少女漫画家がムリして描いたオジサン」にも思える。

 主役級のキャラクターに俳優を起用してあるが、その声の演技は(予想通り)余り上手くないため、ややもすると「キレイなお人形さん」に見えるキャラに、「命と感情を吹き込む」という所まで行けず。
 特にCGキャラでは、声の演技力がとても重要なのに…

 物語。
 タイトルにもある通り、未来で起こる「日本鎖国」状態が、ストーリーの大きなカギになっている。
 しかし…このスケールが大きすぎ、映画の中では消化しきれていない。
いや、この作品なりに鎖国の内情を描いているのだが、明かされる真相はスカスカの雑なもので、劇中に見られるのは、日本でも ごく狭い範囲の出来事に限られている。
 これなら、「八丈島鎖国」ぐらいで十分だったんじゃなかろうか…それが映画のアオリ文句としてガツンと機能するかどうかは疑問だけど(八丈島の人ごめんなさい)。

 主人公らが直面する事態や敵を大きく設定し過ぎると、映画に現実感が無くなり、観客は自分と切り離された世界の出来事に思ってしまい、「ふーん」以上の反応を引き出しづらくなる。
 これだけ現実の日本と隔絶しているなら、いっそ、舞台を架空の世界にした方が納得させ易かったろう。
 『APPLESEED』は、そこいらを比較的上手くコントロール出来ていたように思うが、この作品では失敗。
 「孤立を恐れず、世界に対し断固とした姿勢を見せる日本」と「日本とモメる事を恐れ、日和見主義で通したいアメリカ」という、現実と正反対の国家関係は、有り得ないと思いつつ何だか可笑しかったけど。

 「ある事態」に陥っている日本の内情に対し、ヒロインは有効な手を打つことが出来ず、結局は「悪のボスを倒す」といった分かり易いレベルの作劇に終始する。
ボスが背負うドラマも安っぽく…日本鎖国、という異常事態の中心に居座る悪役としては、余りにも どうでも良い。
 こればかりのアクションを描きたいのなら、ストーリーは「ロボット犯罪組織と捜査官の戦い」ぐらいに抑えて構わないのでは?
 風呂敷を広げすぎたため、多数の綻びが生じ、キレイに畳む事も出来ず、肝心のアクションシーンを楽しんでもらう前に観客の頭を不満と疑問符で一杯にしてしまった。

 頑張って作り上げられた拘りの画面が勿体ない、「語りたい事・見せたい物・感じ取って欲しいテーマ」の絞り込みを怠った映画。
 この高い技術の器に、どんな凄い物語でも盛り込む事が出来たはずなのに…と思うと、ひたすら勿体ない。
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『みなみけ~おかわり~』最終13話.「みんな揃って、ごちそうさま」

 長女の留学を巡るドタバタ…というより、ハンバーグ作りに関わる騒動が話の中心。
 料理の失敗を漫画的に描く際、よくやる「想像を絶するマズいシロモノが出来た」という見せ方はせず、焦げてしまった・材料を違えて微妙に変な仕上がりに、といったリアル気味の失敗を描いていたのが、珍しい。

 不安と寂しさを抱える三女の布団に潜り込み、一緒に寝てあげる次女は、初めてに近く姉らしい行動を見せたのか、自分の不安を三女の体温で紛らわしたかっただけか。
 長女を前にして、堪えきれず涙を溢れさせる三女の表情変化、二人が抱きついた長女の体を柔らかく見せる表現など、作画がとても良く、シーンを盛り上げる。
お陰で、話の内容としては特筆する程でもなかったと思うのに、何だか良いモノを見たような印象が残ってしまう不思議。

 ラスト、まだアニメのオリジナルキャラであるフユキに拘っていたのが、何とも。
 それも、「三女自身はフユキの部屋の表札前を無表情に通り過ぎていた」のに、スタッフの側から「フユキの手紙が届いていた」というイベントを挟み込み、無理矢理 思い出させ感情変化を起こさせる強引さ。
 このシリーズをフユキで締めたいのであれば(本当のオチは保坂だったけど)、彼を もっと作品の中心に据えて物語構成を考えるべきだったろうに。
そこは躊躇い迷い、中途半端な扱いに終始しながら、未練がましく作品内にその残滓を示そうという姿勢には、感心しない。

 全体に、原作がしっかりしているせいか、キャラクターは面白く、コメディーとしても たまに笑える部分があり、全体に作画も良かったが、「目的の はっきりしないオリジナル要素」に足を引っ張られ、スッキリと混じりっけがなかった無印に比べると、評価は落ちてしまう。
 作品として、まだまだ続けられる内容だと思うから、スタッフを無印に戻して、あるいは総入れ替えで三番目の制作体勢を築き、もしくは反省を踏まえるなら『おかわり』スタッフでも構わないので、続編を期待したい。

『true tears』最終13話.「君の涙を」

 見ながら、わーっと色々な考えが頭をよぎり、まとまらない。
 いい話だったしシンドイ話だったし、嬉しくもあり悲しくもあり…
三角関係は、興味を引きつつ展開していく最中は作る側もアレコレと波乱を入れて楽しく工夫できるが、まとめ上げる段にこそ構成能力と暖かさと非情さが必要とされ、取りこぼした者へのフォローも必要だけれど、やりすぎると「都合のいい話」になってしまうのでバランスの取り方が酷く難しく、大変だなあとか、とにかく色々雑多な考え。

 眞一郎の選択が、比呂美の方であって良かった。
それは、個人的嗜好として「幼馴染み属性」というようなモノがあるから、でもあるけど、こういう作品のパターンとして、妥当なラインへの帰着を避け、「奇矯なキャラ」を選ぶ傾向があるように思われたから。
 しっかりした女性には、「君なら、ボクが居なくても大丈夫」と言いやすい。
フラフラした危なげな女性に「支え」として入る方が、ドラマティックであり、据わりも良い。

 この作品で、比呂美が しっかりしていると言えるかどうかは、分からないけど。
固く閉ざした心の内側が見えてくるにつれ、弱さ・脆さ・可愛らしさが顕わになっていたので。
 部屋に呼んだ眞一郎のマグカップを、彼の手ごと引き寄せて中のコーヒーを飲んで見せ、「間接キス」を演出し、精一杯の親愛と無防備と許容と欲求と、子供な眞一郎にはとても扱いきれない「女」の面を晒す比呂美に、ゾクゾク。
こういう細かな芝居の付け方が、実に上手い作品だった。
 独立して生きることを決意するのは、まだ強いからかなあ、とも思うけど、乃絵も兄と別居になる選択を(望んだ訳ではないが取り乱す事もなく従容と)受け入れ、一人 生きることになったという意味では、変わらない。

 そういえば、この作品は「二組の、普通ではない兄妹の話」だったと言えなくもない。
眞一郎と比呂美は、結局 兄妹ではなかったが。
 愛情が介在していながら、血が繋がっているというだけで(『だけ』と言ってしまうのが職業病)、気持ちが成就する事のない純と乃絵…乃絵には「親愛の情」以上のものは無かったようだけど。
 眞一郎・比呂美が兄妹であった場合、二人は互いを諦め、乃絵兄妹と入れ替えて二組のカップルを作り、乃絵以外はそれぞれに心の傷を引き摺りながらも、上手くいったのだろうか。

 しっかりと歩き、去っていく乃絵の背中に向かい、「眞一郎とアブラムシ」の歌を歌いながらグズグズに泣き崩れる眞一郎。
この余りにも格好悪い姿が、一方の少女を選ぶための代償となっていく。
 「俺、全部ちゃんとするから」という格好良い、都合の良い言葉通りに終わらせず、みっともなく崩れる姿を晒させる事がスタッフの…眞一郎自身にとっても「誠意」となり、後味の悪い身勝手な話から作品を引き上げる。

 最後の最後に自分の涙を取り戻し、風に乗せ、祖母が昇った空に向かって散らしていく乃絵。
「私…涙、あげちゃったから」で始まった作品を閉じるのに、こうなるのは必然であり、考え得る限り最も腑に落ちる終わり方で(喜びの涙…も有り得たろうが)、ただ感心。
 こういうギャルゲー(原作ゲームとは全然違うみたいだけど)へのアプローチもあるんだ、と驚かせてくれる、特異な、情熱を持って作られた面白い作品だった。

『おねがいマイメロディ すっきり♪』最終52話.「温泉ですっきり!?」

 邪悪な夫婦と激しいバトル展開…というような内容ではなく、ほのぼのと終わってしまう。
 キャラクターや基本コンセプトから考えれば、これまでのシリーズで割と盛り上がったクライマックスを迎えていた事こそ、不思議なんだけど。
 前回、視聴者から負け犬オーラを集める下りが可笑しかった。
『ピーターパン』と『ドラゴンボール』元気玉を合わせたような演出。
 負け犬の自分としては、負のオーラならいくらでも出せるけれど、今回要求されていたようなプラスの(?)エネルギーは協力できないっぽい。

 毎回、短い時間の中で、ワンアイディアを広げつつ、無駄な部分は極力刈り込み、楽しませてくれるシリーズだった。
 ラストの意味ありげなウサミミ仮面の言葉、次期シリーズの告知から、まだまだ『マイメロ』ワールドは続いていくのか、と思ったが…
予告では、画面の雰囲気が随分と変わってしまっている(3Dキャラ?FLASHアニメっぽい)。
 レギュラーキャラも入れ替わりそう。
 面白くなるのかどうか、取りあえず一話目は見てみよう。

『R.O.D -THE TV-』01.「紙は舞い降りた」

 東京MXで再放送が始まったので、見る。
 本放送でも見ていて、感心した覚えはあったが、サイン会の場で爆弾を巡ってのアクションまではともかく、続けて飛行機で…の下りを すっかり忘れており、初見のごとく楽しんでしまう。
脳が弱っていくと、こういう所は得だなあ。

 ねねねの職業や性格、三姉妹それぞれの個性を きっちり示し、襲撃者を退ける三姉妹の「紙」能力を印象的に見せ、しかもアクションは二段構えになっている、という、シリーズ開幕を告げる第一話の作り方としては満点、いや娯楽度が高い分、それ以上とさえ言える出来。
 これ一本で完結するOVAだとしても、十分満足できるぐらい見事な構成。
 いやあ、凄い。

 この素晴らしい作品が、どうして後半、あんなにもグダグダになってしまったのか…
 とりあえず、前半、香港大バトルまでは見続けたい。

『機動戦士ガンダム00』第一部最終25話.「刹那」

 全編バトルの連続で、迫力のある内容だった…が…
 アレハンドロの乗機は、結局何だったんだろうか?
イオリア・シュヘンベルグの「墓」に隠してあった極秘の兵器?
 ジンクスが一度にドカッと登場した事からも、まだまだ隠された兵力はありそうなので、彼が普通に所持していた機体、とも考えられるか。
 ソレスタルビーイングの何人居るか分からない評議委員は、各員一機ずつ こういった超兵器を所持している、という設定だって、別に驚かない。

 実戦はリボンズ(アレハンドロに対し操縦能力をどのぐらいに見せていたか不明だが)、あるいは配下のパイロット(居るなら)に任せれば良いのに、単身 戦場に乗り込んでくるアレハンドロの気持ちも不思議。
彼が、経験を積んだ優れた戦闘要員である、という描写は ここまでにあったんだっけ?
 乗機の機体能力が桁外れに高い、とはいえ、戦闘のプロフェッショナルとして集められたはずのマイスターズと互角にやり合うのは、相当な才能を必要とするはず。
 「アレハンドロは、惜しいところで選考に漏れたガンダムマイスター候補。落選を根に持ち続けている」というなら、「ちっちゃい男だなー」とは思うけど、全てに筋が通るか。

 見た事もない超兵器に乗って参戦してきたアレハンドロを、各国パイロットや首脳部は、どう捉えていた?
景気よくジンクスもプレゼントしてくれた事だし、「敵の敵だから、味方」と単純に割り切っていたのだろうか。
 アレハンドロの目的が「新世界を俺色に染める」だったら…組織の全貌を誰も知らない(ように見える)ソレスタルビーイングの中核であるヴェーダを手に入れた以上、そこに自分の意志を反映させていった方が、効率よく意図を達成できそうなのに。

 どうも、アレハンドロが、自分の考えをベラベラ喋りながら刹那を殺そうとする画面に疑問符が一杯付いてしまい、乗り切れない。
 ヴェーダ上からリボンズを排除しようと迫るマイスターズに対し、ハッキングが終了するまで時間稼ぎをしようとアレハンドロが発進、ぐらいの理由付けでもあれば良かったんだけど。

 対アレハンドロ戦で大概ボロボロになったエクシアに、迫るグラハム。
…何というか視聴者の感想としては「ヒキョー」だし、漁夫の利を狙うザコみたいな扱いで、イメージダウン。
喋っている内容にしたって、感心しないモノが多いし。
 「万全の状態のエクシアとも、改造フラッグで互角に渡り合うグラハム」であって欲しかった。
 彼は復讐鬼となっており、思いが遂げられれば手段など選ばないのかも知れないが。

 セルゲイとソーマの疑似親子関係は、殺伐とした戦いの中、唯一ほのぼの要素で、嬉しい。
 ソーマとの因縁を引いた事で、アレルヤは第二部への生存を約束される。
「ハレルヤだけ死んだ」というのがよく分からないけど、体を半分ずつ使っていたのにハレルヤ半身へ被弾したから?
まあ、死んだ人格のハレルヤはシゴフミ配達人にでもなって帰ってくれば(違う)。

 世界は良い方に変わっていこうとしているのか、マイスターズの理想は僅かなりと叶ったのだろうか……という終わり方。
 未回収の伏線等、消化不良な部分はあるけれど、「テロリスト達の夢」が見事実現されて終わるのも正しい事がどうか分からず、「道半ばでの終了」は作品に相応しいのかも知れない。
 いや、当然ながら第二部に続くのは知っていて。
これはコレでアリかと。

 エピローグに、四年後として、また動乱の時代を迎えそうな世界やキャラクター達の様子が示される。
 「死んだと見せて実は生きていた」キャラが続々出て来そうだなあ。
コーラサワーだけは もう何でもアリだから、何度死んでも「いやあ、危ないところだった」と言って帰ってきて構わない。

『狼と香辛料』最終13話.「狼と新たな旅立ち」

 シリーズを通して、「商売」に関わる やり取りの描写は余り上手くなく、アイディアが掛かっているのだろう事や、意外さ爽快感を与えてくれようとしている事は分かるけれど、それを十分に楽しめたとは言い難い。
 ただこれは、商業基礎知識がまるで無い自分のような人間に、「違法ギリギリの手を使って株で儲ける方法」を説明するようなもので、本気で分かり易くしようとすると延々説明が続き、しかもそれだけの時間を費やしても見た人の感想は「へえ、そんなものかね」に留まる恐れがある。
それなら割り切って、最初から、分からない人には「よく分からないけどまあイイや」とだけ思ってもらえば良い、とする判断も間違っていないだろう。
 「そんなモノより、ホロの魅力を描き出す事に全力を傾けてくれ」というのが、自分含む多くの視聴者の希望だと思うし。

 老成しているようで少女のようでもあり、頭が良いようでおバカさんな部分を持ち、「種族の壁」を気にする事なく主人公に全開の(僅かにツンデレの)愛情を向けるホロは、素直に好感が持てる、ひたすら可愛いヒロイン。
いや…今回、命懸けで群れに立ち向かうホロに対し、「彼女の服を濡らさないよう一生懸命運ぶ」主人公の方が、「健気なヒロイン」の立場?

 作品の方向が、次々に襲い来る魔物達とホロのバトルストーリー・次第に勇者として覚醒していく主人公含む…というモノだったりしたら、二人の関係や会話の雰囲気がこうで有り得たかどうか分からず。
そう考えると、旅の商人という体裁、主人公の性格付け、世界の形や登場するゲスト(羊飼い少女など、明確に)まで、「ホロの魅力をガツンと立てる」ためにあった、と思える。

 すっかり引き付けられていたもので、ホロと(主人公も魅力の無い男じゃないんだけど、やっぱりホロ)お別れになるのは寂しい。
 原作は継続中のようだし、好評であれば、続編が作られる可能性もあるかな。

映画『ワールド・トレード・センター』

 WOWOWで映画『ワールド・トレード・センター』を見る。
 オリバー・ストーン監督。ニコラス・ケイジ主演。

 ほとんど情報無しで見たため、ニコラス・ケイジが救助に活躍する内容かと思っていれば、ほぼ全編 生き埋めになったままで、しかも画面が暗くて誰がやっても余り変わらない役柄……いや、そういう状況でなお存在感を誇示できるのはさすが、と言うべきなのか。
 事実を元にしている事で、純粋に映画としては説明不足な点があり、「これ誰?」というキャラクターが突然出て来たりもする。
 しかし、主人公らの安否を知らされ、一喜一憂する家族の様子は上手く描けているし、自分を犠牲にする事も厭わず目の前の命を助けようとする男達の行動は、「分かり易すぎるお涙頂戴」と揶揄も出来るけど、素直に感動的。

 ただ…舞台となっているのがテロを受けたビルだ、という事を考えると、鑑賞後感はフクザツに。
 「地震で倒壊したビルに生き埋めになった男達の話」でも、ほとんど同じ内容には出来たんじゃなかろうか。
 人間が持つ恐ろしい面が米国内においてはっきりと姿を見せたあの時、あの場所に、人間の素晴らしさもまた強く示されていた、というテーマだとすると、題材に意味はあるが。

 9.11について語るのはとても難しくて、「アメリカがひたすら可哀想だ」とも、「悪の報いだざまみろアメリカ」とも出来ない。
 この映画では、そういう部分に出来るだけ踏み込まず、事件が起きた現場の話に限定して描いてある。
それでも、そうした作り方自体が、見た者に意図や志への疑問を感じさせてしまう、それぐらい難しい題材。
 そこまで含め、見た者に賛否様々な気持ちを生じさせる、という意味で、オリバー・ストーン監督らしい映画、とは言えるのかな。

『CLANNAD』番外編.「夏休みの出来事」

 番外編というから、本編とは繋がりのないアナザーワールドの話だったり、誰か脇のキャラ(渚両親の若い頃とか)を描く事になるのかと思えば、普通に前回の続き。
学園祭は終わっているし、主人公も無事告白を済ませている。
 違いと言えば…コミカルな色合いが強いこと、ぐらいだろうか。

 高校も三年になりながら、主人公も渚も、手を繋ぐだけでドキドキして、精一杯頑張っても息を吹きかけての間接キス(?)ぐらい、という、とてつもないレベルの純情可憐ぶり。
 純粋培養っぽい渚はともかく、男である主人公は もうちょっと、年齢相応の認識を…せめて普通に手を繋ぐぐらい…持っていて不思議ないと思うが…
幼くして母親を亡くしている事が、何か影響を与えているのだろうか。
いや、やりたい本能全開で鼻息荒く迫る男より、ずっと好感が持てるけれど。
 この「幼さ」こそ、「番外編」のユエン?

 可愛い、理想的妹キャラかと思われた芽衣が、意外にも世慣れた、若干「黒い」部分を見せる。
あの兄と血が繋がっているだけある…というか直情径行・自爆型の兄より ずっと策士。
 渚母のマズいパンを食べての感想が、「とっても美味しそう『でした』」とする、ウソが含まれない見事な言い回しであるのに感心。
 しかし、母がもうちょっと鈍くなければ、この表現に込められたトゲに引っ掛かりを感じたはず。
「こういう言い方をしても問題点には気付かない相手だ」と鋭く見抜いた上での言葉選びなら、更に賢く、「黒い」。
 このお母ちゃんは、ダンナの発言に傷ついていても、脈絡なく「好きだ」と言われただけで、すぐ前の事をコロリと忘れて喜んでしまうぐらい単純なので、芽衣の読みは全く正解なのだが。

 渚が「こちらの話です」と言う時の手の振り方、ベンチに座る時 スカートを腰の下に巻き込む女の子らしい動作…一々書くと果てがないぐらい、細かい、気持ち良い動きが連続。
作画のクオリティーは、毎度ながらとても高い。

 これで作品とお別れなのは寂しいが…
『アフターストーリー』が作られるようなので、見られる日を楽しみに待ちたい。

映画『エラゴン 遺志を継ぐ者』

 WOWOWで放送された映画『エラゴン 遺志を継ぐ者』を見る。

 間違っている所が無い、ファンタジーとして実に正しい内容の映画だと思うが、既存のパターンを裏切ったり乗り越えたりしている部分が ほとんど無く、見終わって物足りなさが残る。
 粗筋で言えば、「ドラゴンに乗る選ばれた少年が、悪の魔法使いをやっつける」というようなもの。
『ロード・オブ・ザ・リング』だって、まとめると「悪の魔王の力を封じた指輪を捨てに行く話」であり、これだけ聞くと、今更そんな内容の映画など見たい気分にはならないが、画面の端々まで見て取れる拘りと、キャラクターの良さ、ストーリー運びの巧さ、アクションの大迫力で、「面白い!」レベルにまで押し上げていた。
 だから、作りようによっては『エラゴン』も、十分に大人の鑑賞に耐える、出来の良い作品に仕上げることは出来たと思うが…

 長い原作をダイジェストした、というのがすぐ分かる、とにかく駆け足の展開。
重要そうなキャラが呆気なく片付いたり、出て来たばかりのキャラについて関心も薄い内に意外な出自が明かされたり…「タメ」が足りないもので、見ていて感情移入できず、「作り手の都合で強引にストーリーが進められている」と感じるばかり。

 この映画は、「ドラゴンと少年の関係」が最重要ポイントだと思う。
いかにして心を交わし、信頼関係を築き、互いの力を最大限に発揮できるようになっていくか、が。
 せっかくドラゴンを卵から孵したのだから、懸命に世話をする少年、育っていくドラゴン、大きくなりすぎたが故の苦労、共にあるため村を離れる決断…といったパターンのイベントで、短くても、絆を演出することは出来たろう。
 しかし…実際は、ドラゴンは一瞬で成長、さっきまでネズミ(?)を食べていたのに、途端に賢く、忠実になって、当然のごとく主人公と一体になり戦う。
単純なRPGぐらいの描写になっており、薄い。

 ドラゴンのCGは頑張っていると思うし、クライマックスのアクションにも迫力がある。
 何しろ「正しいファンタジー」なので、満足は出来なくとも、見終わった印象は悪いものでない。
 旅立ったきり今作には出てこない従兄や、倒してないボスキャラが控えており、続編を映画化していきたい気持ちは強くあるのだろう。
それを可能にするほど、当たったのかどうか。
プロフィール

飛龍 乱

Author:飛龍 乱
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ですが、現在HPは更新できなくなっています。

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