オタクのゴタク/飛龍 乱ブログ

『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』05.「嘘つき達の国」

 クーデターにおいて国王一家を殺害した「救国の英雄」でありながら、そうとは知らず国王の娘を愛し、自ら殺してしまったことで精神に障害を来し、二度と会えるはずのないその女性を「旅に出た」と思い込んで、ひたすら帰りを待ち続けている男。
彼を追い詰めるまいと、話を合わせて優しく見守る国の人々。
雇われ、献身的に彼を世話する女性。
 国の関係者全てがウソをついており、それぞれが真相の全貌を知らないが故に、不思議な均衡を保っている。
 この作品らしい、見終わって深く考え込まされる内容で、大変に面白かった。

 結局、異常になったかに見せた英雄の男だけが、全体を把握していたのかな。
ラストで、キノに対し何事か話しに行く男を残し、妙に晴れ晴れと帰って行く王女もまた、男のウソを知っていて、知らないフリで通していたのかも知れないが(男と違い、キノにさえ本当のことを話さない、女性らしい一枚上の嘘つきだったとか)。
 国王は、王女やスパイの情報を通し、クーデター計画を知っていた。
ならば防ぐことも出来たろうに、そうしなかった……それは、「もう面倒だから死んだことにして隣の国へ逃げ、持ち出した国家資産により家族でノンビリ暮らしたい」という平和思考からかもしれないし、「この機会に不満分子を残らずあぶり出し、いずれまとめて粛正、その後、国に戻って更に強固な政治体制を築く」のが目的なのかも。
 後者だとすると、国民やクーデター仲間を救うには国王一家の生存を知らせねばならず、するとスパイの友人や王女の命まで危険にさらすことになる。
 どちらを選択するか、決断できかねるだろう男としては、「自分は異常者なので何も知らず何も分からず、何も判断しない」というウソの演技を続けるしかない。

 ウソばかりの中で、「いつまでも王女の帰りを待ち続ける男」「彼のため危険を冒して戻り、ただ側に居る王女」ここには確かに真実の愛情が存在しており、それだけで二人は幸せなのだろう。
 何十年も対外的に結婚生活を維持しながら、しかし互いの気持ちは離れて冷え切っている夫婦と彼らでは、どちらが幸福で、どちらがよりウソツキなのかな。
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『いぬやしき』04.「鮫島」

 極悪異常ヤクザを相手取り、壱郎の怒りが爆発する。
 被害男性に警察へ駆け込まれたり、マスコミに露見したら大騒ぎとなり、今や「恐れるモノなんぞあるかい!」とばかり突っ走っても居られまい暴力団としては、相手にヤミの借金があるとか因縁が付いている訳でもない一般人を無茶な暴行の対象には、なかなかしないような。
損得で考えるに「余計なことはするな」って感じで。
 ご意見無用・やりたい放題の非道集団として描くなら、目を潰すぐらいで済まさず、殺した方が後腐れなさそう。
壱郎に殺人をさせるのも、まあ、ナニだけど。
 極悪組織で、失明し暴力人間としては役立たずになったかつての幹部のため、誰とも分からない相手を探し出して復讐する部下が居るとは思えず(その前に、勢力争いで弱体化した組ごと無くなりそう)、これで十分なのか。

 もう一人の改造兵器人間・獅子神 皓の方が、ヤクザより恐ろしい。
一家皆殺しの際、父親と入浴中の幼い男の子はどうするのか……と思ったら、「息子を庇おうと覆い被さった姿勢のまま殺された、父親の体重で湯に沈められ、溺れ死ぬ」という、獅子神に一撃で殺されるよりもっとコワイ片付け方するのに、感心しつつゾワッと。
よく考えたなあ、こんな事。
 そういう心の無さと、引きこもりの友達を救いたいという気持ちを一人の人間に同居させる造形が、凄い。
 奥先生の作品は、心が冷えるような醜さ・汚さ・冷たさと、理想論過ぎるぐらいの美しさ・優しさ・温かさを同時に描くのが、特徴的。
そして、絶対……でもないけれど、後者に優位性を持たせがちなのは、作者の人間性ってものなんだろうな。
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