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『ルパン三世 PART5』最終24話.「ルパン三世は永遠に」

 過去の全作品を肯定しようという意図が強く感じられる、メタなシリーズだった。
 劇中、回想として登場する、シーズンごとに違うルパンのデザインも忠実に踏襲してあったが、変装マスクの違い…という理解?
 顔見せ、あるいは名前だけで、懐かしいゲストキャラクターも大勢登場しており、嬉しい。
これ誰だっけ?があったのは、自身の薄さで悔しいけど。

 カリオストロ公国、再登場。
観光地化した公国はまだしも、あの地下牢?を再見することがあるとは思わなかった!
確かに、衆目とも監視カメラとも無縁な場所だが。
 クラリス(彼女との再会を躊躇うならジョドーとか)の許可を取って入ったのかなあ?
彼女も姿を見せて良かったような……そこはさすがに制作側が遠慮したのか。

 「殺し屋」としての次元・五ヱ門、そしてルパンが描かれた。
 クズ悪党ではない、職務でルパンを護送しようとしただけの警官隊?を容赦なく撃つ…銃を弾き飛ばす、胴体のドコかを狙う、という曖昧な描き方ではなく、片目を撃ち抜いてハッキリ「殺す」次元の凄み。
 元々、次元は「他者を殺すことに冷淡、なのに人情味もある男」であって、「可能な限り殺したくない」なんて考えは持ってないと思うな。
ましてや、フツーなら敗北して当然ぐらい多数の敵が相手の戦場。

 ルパンとの関係に疑問を感じる五ヱ門の心情について、僅かずつ膨らませてきたシリーズ構成が巧い。
 「自分はルパンの何なのか」への答えは得られたのかな……恋する乙女のような疑問だけど。
 ストイックで自己を追い込み気味な五ヱ門(初登場時はそうでもないが)にとって、享楽的であり、ルール無用な発想と行動を見せ、共にあることで「楽」にさせてくれるルパンの存在は、必要不可欠なんじゃなかろうか。

 アニメ史上初めて、「ルパンのマスク」を取り、真実の自分を晒すルパン。
 原作でも、ハッキリとこの顔が描かれたことはない。
普段の顔とそう変わらないのか、まるっきり別人の顔なのか…不二子はそのまま受け入れていたな。
ルパンと一緒に暮らすことで刺激がなくなった、という不二子だが、そんな彼女も知らないルパンの「顔」があった。
 素顔を見せないルールと同じく、ルパンの行動全てがアルセーヌ・ルパンの「盗術」に倣っているのだとすると、彼の本当の顔はまだまだ底知れないんじゃないかな。
それが理解できたなら、不二子には、もう一度ルパンと共にある選択肢が出来たのかも。

 アナログな大怪盗ルパンと、デジタル技術の激突を大きなテーマとした今期。
  警戒厳重な施設へと潜入、変装やトリックなど用いてお宝を盗み取り、高笑いを残して逃げ去る、これがルパンの基本的行動様式であり、「ハッキングにより電 子マネーを自分の口座に移す」なんてのじゃあ、どうしても面白味に欠けてしまう…『攻殻機動隊』みたいにそこを徹底する描き方もあろうが。
 世界中の人間たちが監視網となり、収集されたデータを元に解析することで、ルパンの行動がほとんど予測できてしまう設定。
 第一シーズン「先手必勝!コンピューター作戦」を今日的にしたような。
コンピューターに個人データを入れることで、その人間の全てが計算予測されてしまう、という物語、「電子頭脳は何でもできる」といった科学への盲信により(それよりも物語上の便利さか)一昔前は結構見かけたネタ。
さすがにバカバカしいとされたのか、昨今すっかり見なくなっていたが、ビッグデータ解析やAIの驚異的進歩により夢物語とばかり言えなくなってきている。
 「そんなバカな」の発想に、時代が追いついてきた、って感じかな。

 追い込まれたルパンが、ヒトログへの反撃として用いた手段が、その先進・透明・公平性を逆手に取り、暴かれては困る不透明な事柄を多数抱える国家首脳部への、ヒトログ経由での機密暴露。
 一企業を越えたところから圧力を掛けようという考え、なるほどなあ……だけど、その機密はどうやって入手したの?
ルパンが天才ハッカー並みの能力を持っていてはテーマがボケると思え、アミからデータ提供を受けたのか、とも思うが。
政治家が金庫に所有する証書や領収書・念書などを「アナログに」盗み出し、読み取った情報を元にヒトログへ書き込んで、晒す、という風だと良かったかなあ。
 エンゾ、一時的にヒトログの公開を停止し、国家首脳部の機密保護を約束、その上で国単位の協力を得てルパンを追い詰めれば済んだろうに。
そんなことをしては目指す理想に辿り着けない、と彼が考えることまで読んで行動していた……それこそルパンの、AIを越える凄みか。

 倒壊するビルの側面を、ダンボールで土手を滑る遊びのように楽しげに、殺し合って当然だろう関係と状況を忘れたように落ちていく一行。
エンゾもアミも、自分の中にこんな一面があるなど考えたこともなかったのだろう。
 外装を剥ぎ取り、内面を明らかにしてしまう、ルパンのそういう所に次元も五右衛門も(不二子も銭形も?)惹かれているのかな。

 シリーズを通し、ルパンの頭の良さが、言動や行動からしっかりと感じ取れる、非常に良く考えられたシナリオで、嬉しかった。
ネズミ一族・族長との戦いで、正々堂々と戦わ「ない」ルパンらしさも大変結構。
 かつてないほど不二子が魅力的に描かれたシリーズでもあった。
手に負えない扱いづらさがあり、しかし強烈な魅力を放つ、ルパンが愛するに足る「女」に出来ていたと思う。
 出番はそう多くなかったが、有能な銭形もポイント高い。
余計なことを語らない銭形に変わり、代弁する部下の八咫烏も良かった……意外と裏切らなかったなあ。
 『4』にも出来の良い話は多々あったけれど、シリーズ全体の完成度はこちらが遙かに上。
個人的思い入れが強く既に伝説である『1』に続く、面白いテレビ「ルパン」だった。
 やり切った感もありつつ、できればこのスタッフで、また新たなシリーズを見てみたい。
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