『ルパン三世 プリズン・オブ・ザ・パスト』2019-11-30 Sat 10:16
3DCG映画版の公開を控え、制作されたテレビスペシャル。
弛緩しきった内容で、最後まで見るのがキツイ。 「次元と、恩人の裏切り」「ルパンらと行動する理由を問われて戸惑う五ヱ門と、王子」「監獄への潜入を図るルパンと、近づけまいとする銭形」といったレギュラーキャラクターへの動機・対立のドラマ付けをしながら、ほぼ全く活かせていない。 次元・フィネガンの因縁について、セリフで説明しただけ? ここは大事なところじゃないかな……簡単に済ませたいんだったら、そもそも過去の関係など設定しなければ良かった。 「失敬な、ではソレガシは辛子か」といった、よく分からない言い合いでケンカをするルパン達。 子供っぽすぎると言うか、三人の関係を悪くしてから戻したいストーリーの都合で動いており、人間としての認識も難しい。 まるでルパンを逮捕しようという気概のない銭形は、まあスペシャルお馴染み。 監獄側に配置した方が良かったんじゃないかな。 ルパンらの他に監獄潜入しようとした数人を描くのは、本当にもう時間の無駄。 大した特殊能力がある訳でなし、どうでもいい警備システムにやられてしまい、対比してルパンの優秀さを示そうにも、警備突破方法がまた「乾電池を外してロボットの動きを止める」とか「ロボかと思ったら中身は犬でした(意味不明…)」といったもので、何とも。 三下の自爆に巻き込まれたはずのヒロインが、何の説明もなく助かるのに唖然。 どころか、爆発した本人まで無事だし。 悪党の銃撃は呑気なルパンらに絶対当たらないが、ルパンら攻撃は百発百中、しかし水上車では(わざわざ返してもらった銃を)撃ったり撃たなかったり。 テレビシリーズ「4」「5」、あるいは『次元大介の墓標』をメインで手がけた優秀なスタッフが居るのに、彼らを起用しなかったのは、「これぐらい緩んだ、スカスカの、安心して見られると言うより全編見通す必要すらない程度の作りがスペシャルには相応しい」と考える上層部の意向があるんだろうな。 今回の監督・脚本も単話ではテレビに参加しているのか。 『墓標』『血煙』は緊張感に溢れる傑作だったが、お茶の間で子供からお爺ちゃんお婆ちゃんまで無警戒に見るテレビ作品としては、刺激が強すぎるかも。 しかし、せめて敵キャラの強烈な強さぐらい、見習って欲しかったなあ……フィネガンって弱いし、アホだし、「善人か悪人か分からない」じゃなくて「どっちでも、どうでもいい」男で。 良かったところは、銭形が指弾でボタンを飛ばし、牢屋の解除キーを押すシーンぐらい。 ファンの、どうせ今回もダメなんでしょ、という期待?に応えるスペシャル。 「ルパン」がこの形でしか展開していないなら、もうコンテンツとしての寿命を確信しそうだけど、特に『墓標』『血煙』が本当に出来良くて救われる。 3DCG版も、傑作になっていれば嬉しい、とは思いつつ…… 『峰不二子の嘘』に続く、小池監督の、ルパンを中心に据えた二時間強の劇場版が見たい。 スポンサーサイト
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『私、能力は平均値でって言ったよね!』07.「たまには休暇って言ったよね!」2019-11-21 Thu 15:01
第5話「みんなの昔話って言ったよね!」
オープニング無しの構成に、?と思ったが、なるほどレーナの悲惨に過ぎる記憶が語られる内容から、陽気でノリの良いOPは不釣り合い、というキャラへの配慮によるものか。 といった予想を覆し、話し終えたレーナへのマイルとポーリンの態度は、しらーっとしたモノ。 ボロ泣きメーヴィスぐらいの反応を全員が示すとばかり……意表を突かれ、笑ってしまう。 この冷淡とも言えるリアクションは、「悪党への個人的憎しみの余り仲間達にも『殺人』を経験させようとしたレーナの狙い」と「それぐらいの経験なら自分達もしている」事から生じている。 実際、いずれ父親の仇である義父に復讐しようという強い意志を抱え、しかもそれを淡々と話すポーリンの同情を買うには、まだ不足なのだろう。 マイルに到っては、「祖父と母が盗賊に殺されたように偽装されているけれど真犯人は実父」で、レーナ・ポーリン設定の複合ワザになっているし。 しかしマイル、普通の幸せを望んだ転生のはずなのに、シンデレラ以下、謀殺さえされかねない実家生活は希望と全く違っており、二度と自分への害意を抱かない程度に「うっかり」痛めつけて良かったような。 マイルは決して正義の味方ではなく、目に付いた範囲では過剰なほどの正義感を発揮するものの、それ以外で起こることに関知しない。 6話、輸送隊の危険を排除することなど彼女には簡単だったはずが、護衛の依頼が無かったとはいえ特に動かず、偶然助かった知り合い老人以外に多数の死者を出してしまった。 元々、彼女の要望通り常人並みの能力しか持たされず転生していたなら、既にどこかで死亡していたかも知れない、ということについてはどう考えてるんだろ? その時は冒険者など選ばず、家出して農家・商店にでも転がり込み、戦いなどと縁の無い人生を送るつもりだったのか。 そもそも、マイルは驚くぐらいに考え無しだからなあ。 彼女の能力や性格の設定に合わせ、コメディーで通すなら、頑張れば手が届く範囲では死者を出さない方が良いかと。 4話、石造りゴーレムの合体に思わず「ビルドアップ、キター!」と叫んでしまうマイルに大笑い。 『鋼鉄ジーグ』はそんなにメジャーな作品でなく、若い者は知らないと思うよ、『鋼鉄神ジーグ』だって12年前。 「スーパーロボット大戦」でお馴染み? マイルの古参アニオタっぽい知識について、本編ではまだ触れられてないと思うが、いずれ転生前の出来事として語られるのかな。 |
『ウルトラマンタイガ』19.「雷撃を跳ね返せ!」2019-11-10 Sun 10:56
シリーズとしての折り返し点をとうに過ぎて。
やはりというか、思った以上に、作品の根幹を成す「一人の地球人の体に、三人のウルトラマンが同居する」という設定が使えていない。 出身惑星さえ違うウルトラマン達による衝突、また彼らと地球人との立場の違い、敵への対応・作戦の違いから起こる危機、それらを乗り越えて発揮される本当の(それ以上、何倍にもなる)力、といった、当然予想される物語への組み込みがほとんど無く、「そういう設定だから一緒に居る」だけに留まる。 トライスクワッドによるネット配信ボイスドラマでフォローが成されている、って話も聞くけど未聴。 主人公の先輩が宇宙人だという設定、こうなるとウルトラマン人間体なことを隠蔽する主人公、それから先輩が正体を隠している(そもそも隠せていないが)所に意味が薄くなってしまい、うーん。 超能力アイドルや魔法の話を前後編で展開する余裕があるなら、こういった基本を固めるのこそ優先じゃないかなあ。 ただイヤな悪役というだけで魅力に欠ける敵・霧崎が惜しい。 前作『R/B』の愛染どころか、後半でボス敵になった美剣サキにも全然負けている。 彼との最終決戦に向かうのだろうシリーズの流れには、あんまり期待が持てなくて残念。 それではこの作品に見所がないのかというと、いや、全編目が離せない。 もう驚くぐらい、ミニチュア特撮に力が入っているから。 執念を感じさせる作り込んだセットを手前に置き、ウルトラマンや怪獣の巨大さを感じさせるのは、まあ恒例として。 今回の内容では、高速道路上で怪獣から逃げる車を、模型車のラジコン走行(?)により表現し、高架の道路が次々落ちる中、走り続ける一台の車をカメラが追って、「崩落する道路に巻き込まれるサスペンス」と「このセットどこまで作ってるんだ?」二つのドキドキを感じさせてくれた。 前回冒頭、少し映りの悪いテレビなら実景と間違えるぐらい細かい街中の線路を電車が走る、これだけでも凄かったが、「その模型電車内にカメラを置き、窓越しにミニチュア街の風景を移動しつつ捉える」このショットには「おおお!」とか声が出てしまった。 長い特撮の歴史でも、こんなことやったのは、初めてじゃなかろうか。 他にも、「地下から出現する怪獣」というお約束のシーンについて、ミニチュアの駐車場セットを本当に深く掘り抜き(高くセットを作ったのかな)、穴の底に頭部を覗かせる怪獣の、これまた見たことない絵があったり。 ビルセット破壊の際、割れる窓ガラスをCGで?細かく入れて巨大感を出そうとしていたり。 とにかく熱い! 予算は決して潤沢じゃなかろうに、特撮班の度を超した情熱で、数百倍の予算規模で撮られるハリウッドCGにも負けない、驚愕の画面を見せてくれる。 特撮スタッフは家に帰れているのか、無駄な心配をしてしまうぐらい。 興味深いエピソードもある、例えば18話「新しき世界のために」。 ボロアパートに暮らす宇宙人、という意味では『ウルトラセブン』メトロン星人のちゃぶ台シーンを思い出す。 しかし、メトロン星人は「驚異的な科学力や侵略意図の偽装のため」ボロアパートだったのに対し、こちらは「普通に働いても生活が苦しくてそこに住んでいる」。 以前は、同等以上の力を持つ敵対者・侵入者として宇宙人が描かれたけれど(「怪獣使いと少年」のように難民然とした宇宙人も居たか)、今は、平穏に暮らそうと地球にやってきたが、差別のある生活に疲れ不穏な思想を吹き込まれたことでテロリストになってしまう「不法入国者」。 『仮面ライダーゼロワン』のヒューマギアもまた、人口減少に苦しみ、海外からの労働者や移民に頼るしかない状況で、日本人とは「異質な」考えを持つ人々への偏見・不公平な処遇は続き、そこに火を付けられた時の恐ろしさについて描いていると思える(勿論、それでも通じ合える喜びも)。 日本人だけでは社会を維持できない未来、いや現在、すぐに考えるべき問題。 今回の、相撲取り(雷様?)みたいな怪獣と戦いつつ、ヘソのカプセルに捕まっている社長を助け出そうとする、『ウルトラマンタロウ』みたいな馬鹿話も、単体として楽しかった。 シリアスな連続エピソード中で扱って良いネタかどうかはともかく。 このまま、特撮スタッフ入魂の画面に応えるシリーズクライマックスに、なると良いなあ。 |
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