『彼方のアストラ』最終12話.「FRIEND-SHIP」2019-09-20 Fri 14:11
一時間枠のシリーズ最終話。
地球とアストラの関係について、キューバ危機に端を発する第三次世界大戦から時間線が分岐している、ということだったので、アストラ号は母星到着寸前で時間断層に落ち、キューバ危機の最中に出現して、「戦争勃発の要因になった核ミサイルを撃墜(アストラ号をぶつけて破壊)するかどうか」そして「結果として、カナタらとポリーナの時間線、どちらを選ぶのか・どちらが存在の根拠を失うのか」重い選択を強いられるものとばかり。 実際は、そういうSF的な展開ではなく、友情や生き方・認識について語っており、そこがテーマだったのか。 超テクノロジーによる瞬間移動を用いた惑星移住は、なるほど。 しかし、移住の事実を無かったことにしようという意図については、ちょっとよく分からない。 移住に伴って戦争が発生しているし、宗教など捨てられた文明もあり、誇って語れる歴史でもない? いや、新しい惑星で再出発しようとしている子孫達に、余計な荷物を背負わせるべきではないという、戦争経験者達の固い決意・思いやりか。 それでも歴史を伝える際、「こうあるべき美しい姿に」「教訓のため醜悪に歪めて」どちらも間違っており、真実のみを伝えるべき。 秘密は、それを守るための(大きなものであるほど高い)コストを要求し、利権を生む。 善意・悪意にかかわらず、隠蔽しようとする努力が作り出す歪みを、カナタらが生命に関わる形で押しつけられてしまった。 自分達も一緒になって歴史の闇に消されるor全てを暴いて生きる、そりゃあ生きる方を選ぶだろう。 数十年後、「彼らの旅には不自然な点が多い、実は全てが歴史捏造を目的とする団体の策略、やはり惑星移住など無かった」という陰謀論が語られ、人類は進歩のないスッタモンダを繰り返すのかも知れないが。 カナタが右腕を失ってしまったのは、衝撃的。 それは「昔、遭難した際、必死で伸ばしても命を救えなかった腕」であり、その絶望から立ち上がって鍛え、今回の難局において仲間達を助けて抱きしめた腕でもあり、自ら死に向かおうとするシャルスの目を覚まさせた腕。 シャルスがまた裏切ったら?という問いかけに、「そん時ゃ左腕もくれてやる!」と叫ぶカナタの強さに、震える。 アニメ史(漫画史)に残るような名台詞だなあ。 右腕を失っても、繋いだ手と手の絆は途切れない。 年月が過ぎ、旅立つ者・残る者と別れても、心はいつも一つ。 逆に、親子関係より近しいクローンであっても、心から手を繋ぎ合っていない、どころか自分達を殺そうとする毒親・敵であるならば、容赦なく訴えて縁を切りムショにブチ込んでしまえ!というテーマも? 不満点は……恐ろしい困難が待ち受けると思っていたアストラ帰還・犯罪行為と真実追求へのプロセスが、「理解あるしっかりした、王の権威も通じない大人」の存在で一気に片付いてしまうところ。 カナタらアストラ号クルーが王城に乗り込み大立ち回りの末、毒親を全員やっつける(バトル漫画のように一対一で戦いオリジナルをねじ伏せる)、という形なら納得できたかというと、それも、うーん、だけど。 ポリーナは歴史の証人という役割以外に存在感が薄く、真実が書かれた日記とかでも代役が務まりそう。 浦島太郎的な自分の年齢に気絶するところは笑ったけど、もう少し登場が早く、皆の「姉」として相談役のキャラクターでも付けていれば。 歴史の真実、捕まえられた親たちの反応、それを見るアストラ号クルーの心情など、余りに駆け足で、ドラマとしてズッシリ受け止めるには物足りない。 これら全て、「もうちょっと話数があれば」解消できたかも知れないところ(作者はそこを重要と考えず、余裕があったなら他の部分に注力した可能性も)。 先週まで、とても物語が完結するとは思えず、何かクリフハンガーを仕掛けて第二シーズンへ続く、という形を取るものとばかり。 「アストラに帰り着いてみたら人類全員がまたお引っ越ししており、置き手紙もナシの行方を捜し、少年少女の旅は更に続く」とか(最悪)。 それを、原作があるとはいえ、この話数でまとめたアニメスタッフの手腕は、褒められるべき。 未読なので気がつかなかったー!原作は篠原健太なのね。 『SKET DANCE』はとても好きな漫画で、周到に考えられたストーリーと、濃いキャラクター達の熱いドラマ、笑い、それから冷静に全体に目を配る作者の知性を感じる傑作だった。 カナタの崩れ顔や、知的だがおバカさんなザックから、『SKET DANCE』を連想して良かったはずなのに! いずれ原作も読んでみたいな。 スポンサーサイト
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この記事のコメントこんんばんは、飛龍先生。
私はあのベルギーに住んでいる『Ha-Ha』の大ファンです。お元気ですか?(^x^) あの、ファンメールを送ってしまいました。 時間があったら、読んで頂きませんか。 真に有難うございます!! では、お元気でそしてまたいっぱい「巨乳お母さん」の物語を描いて下さいね。 私はいつもベルギーから応援してます! 宜しくお願いします、 Scalper Jack。
2019-09-22 Sun 20:05 | URL | Scalper Jack #-[ 編集]
>>しかし、移住の事実を無かったことにしようという意図については、ちょっとよく分からない。
昨今の深夜アニメは毎期数本は“なろう”原作のアニメがあります。 主人公は現世では冴えなく落ちこぼれのニートやぼっち設定。 でも、転生先では一躍ヒーロー。 殆どの主人公は元の世界に帰る事なんて望んでもいない。 この主人公=惑星アストラ移住第一世代。 つまり過去の訣別を一番したいのは、第一世代で汚点とも言える地球の歴史は無かった事に。 たった100年巻き戻したのも、その100年間が人類最大の汚点だから(第一世代に取っての)。 戦争体験者の方々の口が重いのと同じです。 >>不満点は……恐ろしい困難が待ち受けると思っていたアストラ帰還・犯罪行為と真実追求へのプロセスが、「理解あるしっかりした、王の権威も通じない大人」の存在で一気に片付いてしまうところ。 王国とは言え、元をただせばただの一族経営の株式会社とその社員w 地球の歴史の保管とワームホールの管理・処分と言うパンドラの箱に近付かせない為だけの王政。 権威もクソもあった物じゃないw ただカナタ達の歴史だと、ナゼ唯一王政が認められてたかまでは語られて無いが。 >>ポリーナは歴史の証人という役割以外に存在感が薄く、真実が書かれた日記とかでも代役が務まりそう。 確かに少し物足りない感じはあったが、キトリーとフニの年齢差をポリーナが使ってたコールドスリープを使用して起きたとの推理の道具として利用されてたりして、いないよりかは読者を惑わす(w)には、説得力は増すだろう。 >>もう少し登場が早く、皆の「姉」として相談役のキャラクターでも付けていれば。 頼れる大人の存在があると、どうしても依存的になり、B-5班全員の成長が阻害される可能性が出るのを、作者は嫌ったのかも(あくまで少年誌なので)。 >>歴史の真実、捕まえられた親たちの反応、それを見るアストラ号クルーの心情など、余りに駆け足で、ドラマとしてズッシリ受け止めるには物足りない。 原作が全五巻と言う、宇宙スケールの作品を扱うにしては少し巻数が少ないと思えるのは、当時あまり人気が無く大人の事情でこうなったのか? それだとナゼアニメ化したのか説明出来ないがw 子供時代に宇宙への魅力をアニメで数多く見た自分にとっては、久々に胸躍るアニメだった。 その上、過去の作品のオマージュとも取れる表現も幾つもあり、その部分も楽しめた。 最近のアニメは中々SF的宇宙をテーマに扱う作品が無く、少し残念。 ガンダムやロボアニメだけが、宇宙を扱うアニメでは寂し過ぎる・・・
2019-10-08 Tue 23:44 | URL | u12 #-[ 編集]
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